ゆるかん

赴くままにゆるゆるっとした感想を。観劇・読書など。残念ながら頭のいい考察などはできません。「私も読んだ!観た!」な方の感想聞きたいです。お気軽にぜひ。

とんび/重松清 感想

久々に会った友人にすすめてもらった本。

昔は重松清ハマってよく読んでいたけれど、しばらく読んでいなかったので、

いそいそと読み始めました。

 

以下、内容に触れます。

 いや~なんともじんわりした読後感。

これぞ重松清

わりかし分厚い且つ、結構細かく区切ってあるので、

ちまちま読んでいこうと思っていたのに、結局一気でした。

 

最初は、ヤスさんの感じ、悪い人ではないんやけど苦手だな~。

この粗雑で短絡で、やかましい感じ・・・

と思っていましたが、読み進めるにつれて、やっぱり

この感じが愛おしくなってしまいますね。

実際にこんな人が親だったら大変でしょうけど。

どんなに無茶苦茶でも、ここまでかっていうくらいの

どでかい愛情があると、憎めないです。

 

美佐子さんがいたら、また違うんだろうな、とおもいましたが、

美佐子さんがいなくても、アキラ君をこんなにもしっかり育てられるとは、

ヤスさんすごすぎです。なんていい子。

アキラ君が東京へ旅立つとき、歯ブラシの事とか、野菜ジュースの事とか、

すごく細かくお父さんの世話を焼いた手紙を残していくところで、

ぐっと来てしまいました。

あの細かさというか、リアルさというか、ほんとうに

「そんなことどうとでもなるでしょ」みたいなことをちまちま心配しているところに、アキラ君の大きな愛を感じました。

 

そんなしっかり者のアキラ君だけど、野球部のケツバット事件とか、

お見舞いに行かなかったことを悔やむ、みたいな、

その時々の年相応の駄目さがあるところもよかったです。

 

あと、地の文(言い方あってますかね?地の文って中学校以来聞いてない気がします)で、

『ヤスさん』『美佐子さん』呼びなのが、なんだか味があってよかったです。

 

そして何より、終わり方がよかったです。

どかんと事件が起こるわけではなく、皆で海で、美佐子さんに思いを馳せながら、

ヤスさんが泣いて、「やしゃん、やしゃん」。

この話で、これ以上ない素敵な終わり方だと思いました。

 

親にやさしくしたくなる一冊でした。

やっぱりいいなあ重松清