ゆるかん

赴くままにゆるゆるっとした感想を。観劇・読書など。残念ながら頭のいい考察などはできません。「私も読んだ!観た!」な方の感想聞きたいです。お気軽にぜひ。

とにかくうちに帰ります/津村記久子 感想

ネットで見かけて。

初めて読む作家さんです。

表紙がビビットで目についたのと、職場小説でこのタイトルって

絶対共感できるでしょうと思ったので、読んでみることにしました。

 

以下、内容に触れます。

 うん、好きです。

なんだかいいくらいにユーモラス。

狙ってこてこてに笑わせに来るんじゃなくて、

わかるわー。あるわー。とか、うわスッキリ。この人面白い。とか

にんまりできちゃう感じでした。

そして、短いのもあるかもですが、文章もかなり読みやすいです。

 

話の終わり方、締め方もよいですね。

とくにブラックホールのわたわたした終わり方好きです。

いや仕事しろよってつっこんじゃいたくなるけれど。

 

表題作より、その他の、同じ人の目線で書かれた短編たちのほうが好きかも。

フアン・カルロス・モリーナの話がやけにリアルで、

これ本当にいるスケート選手で、単純に作者が応援してるだけなんじゃ・・・?

と思って検索しちゃいました。

架空の人物なのね。

架空のスポーツ選手を何となく応援するだけの話なのに、

なぜだか読ませる文。好きだなあ。

 

とにかくうちに帰ります。

思っていた意味とは違いましたね。

仕事でやなことあってとか、仕事だるくて、「帰りたい」なのかと思いきや、

雨の中ずぶぬれで歩き続けて「帰りたい」なのね。

どちらにせよ共感はありました。

あの雨で濡れて、思っている以上に異様に体力奪われちゃう感じ、

もう理性とかとんで、大人なのにたかが雨で大声で泣きたくなっちゃう感じ、

家に帰ったときのたまらない安堵感。

『風呂に入ってスエットに着替えて買ったものを食べてすぐに歯を磨いて、今日は眠ろう。』(抜粋)

ハラが雨の中を歩きながら考えているこの感じ、すごくわかる。

冷えて帰ったときの、風呂後のスエット。あの何とも言えない温かく包まれる感じ。

 

一冊を通して、ちょこちょこ「ここでそこまで怒る・・・?」と、

ちょっと登場人物ぴりつきすぎじゃないかと思うところがあったけれども、

細かいところは共感しやすくて、面白かったです。

他にもこの人の本見かけたら読んでみよう。