最近ハマり中の彩瀬まるさんの本。
彩瀬さんの本、大体近くにある本屋さんに一冊とかしか置いてないけど、
それぞれの本屋さんに違う本が置いてあるからとても助かります。
大きな本屋さんに行きたいなあ。
5編の短編集。
以下、内容に触れます。
短編集だけれども、一つの建物と、とある画家、のちの映画監督が
すべての話にかかわっていて、
前の話に出てきた登場人物が出てきたり。
でも絡み合いすぎず程よいです。
私このタイトルとても好きです。
惹かれるタイトル。
2番目の話と最後の話に、最初の話の主人公のマッサージ師が登場するのですが、
最初にマッサージ師が主人公として読んでいた時はもう少し若く感じていたけれど
他人目線で見ると結構なお歳に感じる。
案外そんなものかもしれないな、と思いました。
人の見え方ってみる方向からで結構違うかなと。
お話の締め方が好きです。終わり方。
特に一つ目と二つ目のお話。
二つ目はちょっとニヤッとしちゃう、楽しいおわりかた。
そして一つ目は、粋だな~くぅ~っと思っちゃう終わり方。
爪と桜と大事にしている絵を綺麗にくるっとつなげてくれて、
わざとらしくないところ、粋!
最後の話。主人公は昔の仕事相手との関係のことで
ずっと思い悩んでいるにもかかわらず、今の職場の同僚の子どもに
家でパンケーキを焼いてあげて…そんな穏やかな時間を
『新しい、幸福。郁子が、浪江さんが、晴彦君が、それまでの私が、手を添えて一緒に作ってくれた。』(抜粋)
って思うんです。
なにかをしてもらってる中じゃなくて、子どもをあずかって
パンケーキを焼いてあげてる中に、周りへの感謝とここまでの幸福感を
感じている、この状況ってとても素敵。
その後の『食べて、寝て、働いて。忘れられても、忘れても。』(抜粋)という部分も
とても好きです。
そう、何があっても、忘れたり忘れられたり、
そして食べて寝て働いて生きていくんです我々は。
彩瀬さんの本は、いちいち言わないようなちょっとしたしんどいこととか
ずんっと自分だけが重たくなるような気持ちを
丁寧に掬い上げて読ませてくれるような本。
全体的に暗いんだけれど、その丁寧さにやさしさを感じるので、好きです。