ゆるかん

赴くままにゆるゆるっとした感想を。観劇・読書など。残念ながら頭のいい考察などはできません。「私も読んだ!観た!」な方の感想聞きたいです。お気軽にぜひ。

夫のちんぽが入らない/こだま 感想

一時期ぽーんと有名で、いいと噂だったのできになっていたのですが

タイトルがタイトルで買いそびれておりまして。

図書館にあったので、やっと。

つくられた物語ではなく私小説だったのですね。

表紙のタイトル文字が白地に銀文字で、しかも文字が並んでいなくて

タイトルを読みにくいのが読者への優しさですね。

 

以下、内容に触れます。

これも一気読みしてしまいました。

あつい。実話だからというともあると思うけれど、熱量というか

真に迫る感じがすごい。

引き込む文章が上手いのだと思いました。

文章が上手すぎて、無理やりねじ込んで出血の件は

痛々しすぎて一回深呼吸しました。

 

序盤読みながら、夫さんはこの本のことをどう思っているのか?と思っていて

中盤主人公が色んな人と関係を持ちまくるところで、これ夫さん・・・?

え、今離婚してるとか?と思ったりもしましたが、

なるほど、夫さんはこの本を知らないのですね。

あとがきの最後に

「いつか目にするであろうわたしの夫に、心から感謝します(抜粋)」と。

この一文にとてつもない愛を感じました。

そう、この夫婦間の何とも言えない愛は胸に迫る。

入らなくても、こどもがもてなくても、お互い病気にかかっても、仕事を辞めても。

 

タイトルを見たとき、入らないっていうのは精神的なことかなと

思ってたんだけれど、物理的。

でも、それがわかっていたうえで、それでも自然に一緒にいて

自然に結婚して、それでも入らなくて苦しんで、

それでもお互いを認めて愛し続けている。

主人公の親が主人公を貶めても、それをカラッと、心の底から

否定する夫さんの姿。

夫の実家に主人公の母親が謝罪に行くシーンで

こどもができないことを謝罪されたことに対して

夫の父が、これからもできる、気にしないで、という返事。

この、この人にとっては優しさ何であろう言葉。

でも、できなくてもいい、とか、謝ることではないとかではなく

「これからでもできる」という言葉が、なんと恐ろしく響くことか。

そんな、社会の当たり前という恐ろしい目を持っている「ふつうのやさしい」人たち。

だけど、夫さんはそうじゃなく、ちゃんと主人公に寄り添っている。

もちろん風俗に行ったり朝ごはんを捨てたりするけれど、

でもそれは主人公も夫も、じぶんの限界を超えた部分をどうにかするために

もがいている様であって、決して夫婦のお互いを傷つけようとしていないし

否定していない。

 

「わたしにも「どうかしちゃってた」時期がある。

神経を擦り減らし、ぎりぎりの生活を送っていると、心が壊れて

どうかしてしまうものなのだ。

そんなことも大人になってわかるようになった(抜粋)」

どうかしちゃうこと。誰しも大なり小なりあると思います。

誰もがどうかしちゃう時期があるってこと、自分の為にも

大切な誰かのためにも、ちゃんとわかっていたい。

そういう大人でいたいです。

 

この本のラストが本当に胸に迫ってきた。

「子を産み、育てることはきっと素晴らしいことなのでしょう。

経験した人たちが口を揃えて言うのだから、たぶんそうに違いありません。

でも、私は目の前の人がさんざん考え、悩み抜いた末に出した決断を、

そう生きようとした決意を、それは違うよなんて軽々しく言いたくはないのです。(抜粋)」

こういうことがわかっただけでも、生きてきた意味がある、という著者。

それを母や、子育てをしきりに勧めてくる保険外交員につたえたい、と。

いろいろ辛い思いをしてきたけれど生きてきた意味があるって、こうやって

断言できる生き方ってどれだけ尊いことだろうかと思います。

 

「私の声、届くだろうか。(抜粋)」

心の叫び。これ、今の世の中で、結婚し夫婦が子を育てることを美徳と

考え、他人の恋愛ごとや人生設計に平気で口を出す人が多いこの世の中で

届かない人も、悲しいけれどたくさんいると思います。

でも、この本のおかげで目線が変わる人もいれば

救われた気持ちになる人だっているだろうし、

すくなくとも私には、もちろん100%の想いは無理かもしれないけれど、

でも、届いています。

 

わたしもこんな夫婦のように

一生愛し合える人といられたらいいなと思いました。良書。