ゆるかん

赴くままにゆるゆるっとした感想を。観劇・読書など。残念ながら頭のいい考察などはできません。「私も読んだ!観た!」な方の感想聞きたいです。お気軽にぜひ。

夜あけのさよなら/田辺聖子 感想

ネットでみるにほっこり系の作家さんなのかな?と

一番タイトルと装丁が気になった本を。

以下、内容に触れます。

「人に取られたくない」という独占欲が、愛のかたち

という帯を見て、なるほど、ちょっと束縛系だけど愛情深い彼女と

その彼氏の話かな?と思っていたら

全然違ってびっくりしました。

別にその人の事が大好き、とかじゃなくて、ちょっといい感じな男の内の一人。

自慢もできそう。

その程度だけど、人に取られたら腹が立つ。という流れからの

現代では、人に取られたくないという・・・という言葉。

いやー、あるよ、そういうのあるけど、それを愛とは呼びたくないですね。

でもそういうのあるよね!と激しく同意する、矛盾。

 

最初読んで、ん?と文章に違和感を。

どうやらもともと私が生まれるより前に書かれた文章の様子。

結構序盤で気づきました。

やっぱり昔の文ってどこかぶつぶつ、ばさばさした印象を受けることが多い。

でも、内容自体は今の女たちと同じで、いつの時代もだなあと思いました。

 

最初の方で、なんとも気が重かった主人公が、朝の支度をして

天気のいい外に出て、そのうちだんだん世間がキラキラバラ色に見えてくる、という

シーン。とても単純だけど、目が覚めてきて、気候が良くて、というだけで

気持ちが上を向くことって結構よくある。

その唐突な気持ちの動きをちゃんと描いてあるのがいいなと。

 

この人とはハラハラしないですむし、会った後晴れ晴れ。

この人は顔色を窺って、会った後も物足らない不満がある。

だけど心が揺れるのは後者、ということ。あるある。

 

「女がこうしようと思ったら、できないことはないのである。(抜粋)」

唐突に堂々とした言い切り。

勢いありすぎて笑ってしまいました。

 

「ほめてくれたら、わたしはバカであるからなお一そう、けんめいになって

尽くすと思うのに、ほめないからいけないのだ。男ってバカだ(抜粋)」

これもすごい。怒られそうな物言い。

だけどわかる。

わたしも馬鹿なので好きな人に褒められたらいろいろやってあげるのに、

そういう人に限って褒め下手だったりする。

 

それにしてもあっちへふらふらこっちへふらふらして、最終的には

三人とも手の中からこぼれて行ってしまって。

ぜんぜんほのぼのした話じゃなかったな。

まあありかなって人たちをつなぎ留めておくのではなく

大切な人にであってその人を大切にして生きていきたいですね。