ゆるかん

赴くままにゆるゆるっとした感想を。観劇・読書など。残念ながら頭のいい考察などはできません。「私も読んだ!観た!」な方の感想聞きたいです。お気軽にぜひ。

八日目の蝉/角田光代 感想

DVDを見かけたときに紹介文であらすじを読んで気になって。

映画を見ずに本を借りてみました。

 

以下、内容に触れます。

 一気読み―!

面白かったです。とても。

角田さん初めて読んだけれど他も読みたい。

 

主人公はたくさんの人と関わりながら逃亡生活をしていくのですが、

その関わるどの人も、きちんとその人の人生を感じられて、

薄っぺらさがないというか。

厚みのあるお話。

全編を通して、主人公の愛があふれ出ていて、もちろん許されない犯罪者なのですが

胸がぎゅっとなりました。

 

薫が大きくなってから会いに来た千草の

「私、自分が持っていないものを数えて過ごすのはもういやなの(抜粋)」

という言葉、胸にとどめておきたいと思いました。

しんどくなると、そうなっちゃうけど、自分にないものを数えてよくなることって、ない。

あるものを大事にして、ないものは、欲しいなら本気で手を伸ばさないと。

 

小豆島にむかう薫(ここではもう薫じゃないけれど)たちが乗ったタクシーの運転手が

以前逃亡時に乗っていたタクシーだったり、

薫が子どもにこの世界の美しいものを見せたいと思った気持ちは

以前自分が向けられていた気持ちだったり、

偽りの母子ではあったけれど、重なる二人の姿に胸が締め付けられました。

 

「その子は、朝ごはんを、まだ、食べていないの(抜粋)」

この、全力で母な言葉。

そして、忘れていたけれどそれをちゃんと思い出してしまった薫。

犯罪だったけど、愛されていたんだよ。こんなにも全力で。

 

そうとう心揺さぶられるお話でした。

角田さん、次は何を読もう。おすすめありませんか。