ゆるかん

赴くままにゆるゆるっとした感想を。観劇・読書など。残念ながら頭のいい考察などはできません。「私も読んだ!観た!」な方の感想聞きたいです。お気軽にぜひ。

風が強く吹いている/三浦しをん 感想

気になりつつも読んだことなかった三浦しをんさん。

貸してもらったので読んでみました。

読んでから少し間が空いてしまいましたが・・・。

 

以下、内容に触れます。

 アツいなー。

自分は運動しない人間なのですが、こういうスポーツで熱くなっている

青春な本はすきです。

初めは走、ハイジさん好きだな、と思っていたのですが、

途中から王子、そして最終的にユキ先輩に心奪われました。

 

王子、初めはグダグダ言っててどうなんだろう、と思っていましたが、

一人だけずば抜けて遅いのに最初からちゃんと走り切るところとか、

なんだかんだ走ることに心奪われているところ、

そしてそれよりもそもそもハイジさんのことが好きで走っているところ。

素敵でした。

当日の、ハイジが王子に謝罪したときの

「ハイジさん。僕はそんな言葉を聞きたいんじゃないよ(抜粋)」

からの笑顔にときめきました。

あんなに嫌がってたのに、謝罪を求めてないんです。

そして、駅伝が終わっても走ることを続ける気だって、走りながら

自分の走りへの気持ちに気づくところも好きでした。

 

下り坂でスピードを出すユキ先輩。

「走、おまえはずいぶん、さびしい場所にいるんだね。(抜粋)」

これにグッときました。

走れて清々しいとかそういう事を超えて、さびしい場所、という表現。

みんなが走の走りに憧れ、それを美しく届かないものとみているところ。

安易にライバル視させず、ある種神格化して泣きそうに見ている姿に

その走りを想像させられて鳥肌が立ちます。

 

走り終わったユキ先輩の「その二秒は、俺にとっては一時間ぐらいある(抜粋)」

が格好良すぎます。

普通、惜しかったわ!とか言っちゃうのに!

そして走り終わった後も倒れこんだりせず、涙声の後輩を撫でさえする

ユキ先輩らしさ。

 

キングが、今の瞬間を、この一年を、ずっと後でも思い出すだろうって

想いながら走るシーン。

「これが夢であってほしいと思うんだ。二度と覚めたくないほどいい夢だから、

ずっとたゆたっていたいと思ってるんだよ。(抜粋)」

今が思い出になるって思えるほど幸せな瞬間があるって最高の人生だ。

苦しく走りながらも、ずっとたゆたっていたいような時間。

 

ハイジさんが、

「俺にとっての最高のランナーは、きみしかいない(抜粋)」

って、言い切るところ。同世代のランナーなのに、こんな風に言える、

そしてそれを受けた走がそれをかけがえのない、永遠のものと感じられる、

とてもいい関係性。

 

走り終わった後なのにすぐに走り出す走、さすが。

そしてそれに「ちょっと、全力疾走はやめてってば。ねえ!(抜粋)」

と追いかける王子、可愛すぎます。

 

絡んできてたあいつ、最後に改心して出てくるかと思いきや

触れられず。

そんなことより、とにかくそんなことがどうでもよくなるぐらい、

彼らは気持ちよく幸せに走れたということでしょう。

爽快感のある本でした。