ゆるかん

赴くままにゆるゆるっとした感想を。観劇・読書など。残念ながら頭のいい考察などはできません。「私も読んだ!観た!」な方の感想聞きたいです。お気軽にぜひ。

昨夜のカレー明日のパン/木皿泉 感想

この前読んだ本が良かったので、木皿さんをもう一冊。

食べ物が出てくるタイトルの本って期待が高まります。

 

以下、内容に触れます。

 この作者さん(たち)の本は文章が浸みていく感じがありますね。

優しく冷たく温かく。

 

テレビの影響か、いつの間にか会話はつっこむのが礼儀になっている、という部分。

ううん、確かに。

わたしはついつい細かいことも拾ってつっこみがちな人間なのですが

それ、良くないときも絶対あるもんなあと思います。反省。

 

限界になって退職をする、というシーンで同僚や上司の

「どこか驚愕と爆笑と憐憫の表情だった(抜粋)」という表現にびっくりしました。

どこか・・・という表情の表現で爆笑、が入ってきちゃうの、斬新、だけど

とても納得です。爆笑の混じった表情。

そして、それも一瞬ですぐ興味を失う人たち。

たしかにわたし達が生きていく身の回りで全てではないけれど

そういう環境は必ずある。

 

銀杏割り器を見ていつかギフが死んだあとギフを思い出すのだろうかっていう

シーンで、銀杏を割るときに「ギフの遺品の」ってすでに

言いきっちゃってるところ、好きです。

 

どの人もどんどん怒らなくなって、やり過ごして、

嫌われたくないと思っていて。という部分。

うちの職場の人たちも、皆どんどん怒らなくなっていくなあと思います。

嫌われたくない、面倒くさい、というのが主な理由のような。

年をとっても、そりゃあ嫌われたくなんてない。

それがいい環境を作るかどうかは別として。

 

人が死ぬことをわかっていてもなくことしかできない。

それを「夕子のせいじゃないんだから(抜粋)」と慰めてくれる。

これはとても大事なことだなと。

確かに自分が悪いことじゃないことでも何かできたかもしれない、

何もできなかった、という自分を責めちゃうことってあるので、

あなたのせいではないとはっきり言いきってくれる人が近くにいるのって

とても幸せなことだと。

 

「人は変わってゆくんだよ。それは、とても過酷なことだと思う。

でもね、でも同時に、そのことだけが人を救ってくれるのよ(抜粋)」

名言。

そのことだけが。

変わろうと思おうが思わまいがずっとそのままではいられない、

だからこそ生きていけるのだなと思います。