ずしっとした本が読みたいなと思って、彩瀬さんの重そうな表紙の本を。
以下、内容に触れます。
不思議な読後感です。
苦しいような、温かいような。
わかるような、全くわからないような。
親からの愛情って、私はたっぷりもらって育ってきたという自覚があるのですが、
それがない主人公。
大人になってもそれを引きずり続けて、周りから変だと言われたり。
確かに、大人になってそんなことに捉われなくてもって思ってしまいそうなんですが、
それは私がそれを持つもの側に立っているからそう思ってしまうのかもしれません。
大人だって、案外どこか自分のしんどい一部分においては
どうしようもなく子どもの頃の気持ちを引きずってしまうのかも。
主人公と冬馬くんとの関係性がしんどかった。
気が利かない、とか、馬鹿だと心から思っていて、だけど心からいてくれてありがとうとも思っている。
人と人とは全肯定でももちろん全否定でもうまくはやっていけないけど、それにしてもアンバランスな主人公の感情。
年齢差があるにしろ、こんなに自然に愛する相手を見下したままでは、うまくやっていくことは難しいんじゃないかしら。
アドバイスを求めていたはずが、感想を述べたら家族なんだから後ろから刺すな、とぶち切れる明日香。
これも、はたから見たらとても滑稽なんだけど、あるなーーーという感じ。
不安な時に、味方でいてほしい人から意見されると、それが大きな否定じゃなくても響いてしまう。
全肯定以外は満足できない。
途中、仕事も恋愛も読者側からしたらとても不穏なのに主人公が浮かれまくっているシーンが怖かったです。
でもこれってこうして本で読むからそう思えるのであって、こういう周りが見えていないときってあるよねと思います。
突然足元掬われるような。
でも、主人公も、「なにも怖くないはずなのになにかが怖い(抜粋)」と。
漠然と心臓だけがどきどきするような、いやな感覚。わかる。
観てて楽しくなるものは得意じゃなくて、だから自分の創るものは活力にならないし、観ると疲れるという俵さん。
「だけど幸せじゃないまま生きていく人の、一定期間の併走者にはなる。そういうものが好きなんだ(抜粋)」
なるほどな、昔はハッピーな話ばかりが好きでしたが、最近は重い暗い話も読んでて素敵だなと思うようになっていて、それってこういうことなのかなと思いました。
一定期間の併走者。
そしてその作品の在り方を好きなんだといえる俵さんすてきです。
なんだか読んだ後気持ちがグワングワン、だけど言語化できない、そんな本でした。
主人公にそのまま共感はできないけれど、同じ悩みは持っていないけれど、でも全く違う部分で私もどこかこうかもしれないと思うような、なんだか不思議な気持ちでした。