よく平積みされてて気になっていたんですが、芥川賞をとる本は癖が強いという偏見からなかなか手が出せず。
お気に入りのカフェに置いてあったのでパラっと読み始めたところ、止まらなくなって一気読みしてしまいました。
以下、内容に触れます。
なんか・・・すごい本を読んでしまったなという感じ。
主人公は、はじめは「周りにうまく擬態しているが実は変わった人」、という立ち位置なのかと思いきや、
読み進めると、「擬態できていると思っているのは自分だけで、本当は周りから腫物のように扱われている」
実際にいたらきっと接しにくいタイプだというのはわかるんですが。
ただ、これは、どこか自分の話だ、とも感じました。
この主人公と比べるとささやかなひっかかりだけど、自分の大事なもの(ここではコンビニ)が、メジャーとは違うことってあると思うんです。
それを公にしなければ生きやすい。
ただ、それを主張すると周りから嫌な感じで面白がられる可能性がある。
大事にしているものが多数派(家庭、仕事など)だというだけで、自分が正しいと、そうでないやつは気持ちが悪いと切って捨ててしまう周りの人たち、怖いなと思いました。
でも、どちらの立ち位置にも自分は立っていることがあるはず。
ならば私は主人公のように、大事なものを大事であると守り続けられる人間でありたいと思いました。
そして、どんな人の大事なものも、決して否定したりいぶかしんだりしない人間でありたいです。難しいけれど。
「誰に許されなくても、私はコンビニ店員なんです。人間の私には、ひょっとしたら白羽さんがいたほうが都合がよくて、家族や友人も安心して、納得するかもしれない。でもコンビニ店員という動物である私にとっては、あなたはまったく必要ないんです」(抜粋)
この台詞、なんだか胸のすく思いがしました。
文章自体も読みやすくて、短かったのもあるけど、勢いをつけて読めました。
なんだか背筋の伸びる本でした。
読んでよかった。