朝井リョウさん。カフェで以前冒頭だけ読んで、気になっていたので。
以下、内容に触れます。
序盤に児童ポルノ摘発についての記事、という部分があったので、
そういう話か、と思って読み進めると。
ううむ…。これはなかなかずっしり来る本。
「むしろ、言葉にされていることなんて、この世界のほんの一部でしかないのだ。(抜粋)」
そうかもしれない。
みんな、無理やり何かよく使われる言葉に当てはめようとするけれど、
皆もっと複雑な想いや性質を抱えていて、それをちゃんと言葉になんて
できないのかも。
Youtuberの承認欲求と、コメント者の性的欲求。
この本を読まなかったら、わたしもコメントをみても聞かつけないだろうなと。
世間の判断する性的なもの。
確かに、肌色の多さで規制をかけたところで。
自分がまともであると思うためには多数派にいなきゃいけなくて、
でも多数派の中の多数派の中の多数派の…と、常に多数派な人間なんて
逆に少数派で。
多数派がまともであるという認識を持っている限り
ずっと多数派からそれる恐怖からは逃れられないのではないか。
佳道くんが桐生さんと再会して…と読み進めていっている間、
序盤の摘発記事の容疑者と結びついて無くて、
途中で、あれ、この名前って、と気づいたときは衝撃でした。
そして、嫌なエンドになるんだろうなと思いつつ読み進め。
もう一人の矢田部容疑者はいつ出てくるのかと思いきや、
彼の主観では語られなかったですね。
彼の主観がないからこそ、こちらが感情移入しにくい書かれ方だからこそ
彼のやったことを糾弾したい気持ちになる。
諸橋君と、佳道君は、矢田部さんのことをどう思っているのだろうか。
二人はあの人とは違うのに！とつい思ってしまうけれど、
矢田部さんの性的欲求だって止められるものではなくて。
それは二人の苦しみと同じであるかもしれない。
だけど、だけどそれでも、矢田部さんのように
人に直接的な被害を与えてはいないのでは、と思いたくもなるけれど、
じゃあYoutubeのコメントは、とか、ちょっとグレーなところもあるし。
それでも、迷惑をかけないようにと細心の注意を払っていた佳道君の
事を考えると、明らかに知人の子どもってわかった状態であるにもかかわらず
写真を撮りまくった矢田部さんは流石に、配慮がないのでは、とも思うし、
だけど、じゃあどうしても他人に被害を与えないとそもそも
発散できない性欲の持ち主はどうすれば、とも思うだろうし。
なんだかグルグルしてしまいます。
正しい欲、ってなんだ。
