2020の本屋大賞。
初めて読む作家さんです。
以下、内容に触れます。
久しぶりのノンストップ一気読み作品。
とにかく文と更紗、主人公二人が愛おしくて
彼らの幸せを願わずにはいられません。
周りで更紗がだらだらしていてもただきちんとし続ける文。
「文自身がちゃんとしていることと、他の人がちゃんとしていないことは、文の中では別のことなのだ(抜粋)」
これって、まったくその通りなのだけれど、案外みんなできないこと。
これをストンとできる文はとっても素敵。
更紗に対して彼氏の亮が「前はくちごたえをしなかった」という場面。
うわー。
わたしも昔似たようなことを言われたことがあるのを思い出しました。
「くちごたえ」っていう単語が出てくるところがもう信じられない。
自分の思っている通りのリアクションじゃないときに、
意見じゃなくてくちごたえだと思う。
その時点でその相手のことを下にみているのだと、
まったく対等ではないのだと思います。
亮くんとの関係を考える更紗。
「わたしたちが、しっかりと、つながってさえいれば。(抜粋)」
読点って力強いなと思った一文。
読点で否定の気持ちがひしりひしりと伝わってきます。
再会して、自分を憎んでいるのではないかと問う更紗。
それに対しての「どうしてそんなふうに思うの?(抜粋)」
この文の言葉がすごく嬉しかったです。
もちろん文は恨んでなんかいないんだろうなと思っていたけれど、
「そんなことないよ」なんて言うより、もっと、
なんでそんな風に思うか、と問われる方が、救われるものですね。
疑問に思うくらい、そんな気持ちは遠くにあるっていう事だから。
変わらず、自然にやわらかい文。
「それは僕の知らない、光り輝く世界だった(抜粋)」
文目線。更紗に対する気持ちに胸が熱くなります。
更紗の自由さに救いを感じる文。
恋愛感情ではなくても、二人は二人をすごく尊重して尊敬して
大切にしあっている。
そのなんと代えがたいことか。
「わたしたちはおかしいのだろうか。
その判定は、どうか、わたしたち以外の人がしてほしい。
わたしたちは、もうそこにはいないので。(抜粋)」
周りからああだこうだと決めつけられてきた二人。
もう誰も判定をしないで、ではなく、あえてこの言葉。
ふたりはもうそんなところにはいない。
「夕飯にアイスクリームが出てきたらどうする?(抜粋)」
って、私も聞いてみようかな。
二人が再会して、傷の手当てをするシーンが好きです。
変わらない二人。
本当にいつまでも幸せに暮らしてほしい。
二人でいればもう大丈夫だと思う。