はじめましての一木さん。
女による女のための18文学賞をとられた作品。
以下、内容に触れます。
賞をとった西国疾走少女。
なんとなく文学賞のスタイルとか1ミリの後悔も~という本タイトルから
もっとドロドロした話を想像していたのですが。
若者のあつい恋愛でちょっと驚きでした。
桐原、いい男感がすごい。
潮時、が、終わりを意味する言葉ではなく、漕ぎ出すのにいいタイミング、という
意味だということは初めて知りました。
穴底の部屋で高山が離れていこうとする泉さんに、次いつにする?とか
「試しに、二週間だけ会わないでみようよ(抜粋)」とか
できるだけ軽く、何事もなかったように提案するのが逆に高山の切実さを
感じさせられて切なかったです。
このころのモテる遊び人の高山が、将来小汚いおじさんになってしまうのはちょっと
先に未来を見てしまったもの悲しさはあり。
でも、さえないおじさんでもちゃんとチラシは配ってくれるところ素敵。
千波万波で、由井が会おうとしたのは桐原かな、と期待したら別の男が出てきて
ちょっと残念に思ったけれど、幸太郎の人間性も好きでした。
そしてまさかの幸太郎母のナイスアシストで桐原からの手紙!
最後の手紙の、恨み言や責める様子のない明るく未来を見つめている手紙が
嬉しかったです。
もうふたりにどうこうなってほしいとは思わないけれど、
この手紙がちゃんと由井の手元に届いたよということは
伝わってほしいなと思いました。
登場人物がつながっていくオムニバスって、
大した繋がりなかったり、そこムリあるなってことがあるんですけど、
これはすごく自然に人々の人生が感じられてよかったです。
他の話の主人公が他人目線で語られる時、違和感を感じて別人のように思えることって
あるけど、この本では、違いを感じてもそれが逆に人物の性格理解を
深めてくれるような。
希望あるラストで嬉しかったです。
由井がすきなので幸せでいてほしい。