ゆるかん

赴くままにゆるゆるっとした感想を。観劇・読書など。残念ながら頭のいい考察などはできません。「私も読んだ!観た!」な方の感想聞きたいです。お気軽にぜひ。

タタール人の砂漠/ブッツァーティ (脇功訳) 感想

万城目さんが、森見さんと面白いと意見が一致したと

ツイッターで言っていた本。

何も起こらないのに面白い、と。

気になったので。

 

以下、内容に触れます。

ふーむ、渋い。渋い本だ。

 

きっと戦さは起こらないのだろうなと思いながら読み進めていたので、

かなり序盤で、まだ先が長いけど、この後どう展開するんだ?

と思っていましたが、なんやかんやあって飽きずに読みました。

 

死者が二人出ましたが、どちらも、なんだかなあと思ってしまう亡くなり方。

ラッザーリの亡くなり方は、砦の形骸化した姿が滑稽で。

アングスティーナの亡くなり方は、ドローゴが羨ましがっていたけれど…

あの亡くなり方を羨ましがってしまう、渇望した日々に切なくなり。

 

実家で、自分の足音で母親が起きなくなっていて孤独を感じる

ドローゴのシーンが印象的でした。

孤独っていろんな形で皆のそばにある。

 

シオメーニが最後追い出しにかかってくるところは

辛かったです。

よりによってシオメーニ。

あなただってずっと望遠鏡で、それを待ちわびていたのに、

わからないはずはないのに。

野営だって可って言われてるのに部屋をあけさせるなんて。

本人もそのまま戦さで死んだっていいって思ってるのに。

 

わたしたちの人生ってそんなにドラマチックなことは起こらなくて、

だけどきっとみんな何か生きる意味を期待している。

 

ドローゴが、最後に野心的な気持ちになれて、そこが救われました。

周りからどう見えているかはわからないけれど、

ドローゴがその気持ちのまま亡くなれたらいいなと。