彩瀬さんの本。
食べ物のことが書かれている本はついつい手に取ってしまいます。
以下、内容に触れます。
彩瀬さんの本はいつもタイトルが好きです。
短編集、どれもよかったけれど、ひと匙のはばたき好きだなあ。
彩瀬さんの、リアルとファンタジーのバランス感が好きです。
鳥たちのふわふわ、ばさばさした感じが伝わってきてよかった。
あと煮込みがおいしそうだしこんなお店に通いたい。
あとはポタージュスープの海を越えて、もとても好きです。
温泉の道を歩いてゆきたい。
あの、夢の中で眠くて眠くて今にも倒れそうな感じってありますね。
身体が緩んで、幸福で、眠たい、そういう時間の描かれ方が大好きです。
ときどき自分だけのために、自分の食べたいものをたべること、大事にしたい。
かなしい食べもの。枝豆のパンはおいしそうだけど、かなしいなあ。
だけど、いとこのお兄さんとの関係性がドラマチックすぎなくてよかったです。
リアルな距離感。
「ゆっくりと歩いてきた道のかたわらに、『ああ俺のためのものだ。俺を待っていてくれたんだ』というものが立っている。(抜粋)」
それは人か、学問か、技術か、音楽か本か・・・
たとえなんにせよ、人生を生きてきてこれを感じられる瞬間って最高に幸せだと思う。
それとずっと一緒に過ごせる人生は代えがたい。
ミックスミックスピザ。
「稼ぎ手として平等であることを主張しながら、今までにたった一度もメインの稼ぎ手となる自分を想像したことがなかったのは、きっととても不平等なことだった。(抜粋)」
この人はそのことに気が付いたけれど、そのことに気が付かないまま生きていくことっていくらでもあると思う。
私は自分より収入の多い夫に「もしつらくなったらいつでも仕事を辞めてもいい」と言ってもらえていて、その言葉のおかげで気楽に余裕をもって、逆に前向きに仕事に取り組むことができる。
だからこそ、自分もできる限りいつでもメインの稼ぎ手に慣れるくらいがっつり働いて、夫も同じくらい余裕を持てるように、同じ言葉を言ってあげていたい。
一緒に冒険を楽しめるのが大事だって結婚を決めて、つらいときにそれをお互いが思い出せる、そんな夫婦って素敵だなと思いました。
子どもは親からすれば身体の外側にある内臓みたいな急所だという表現に納得。
自分だけなら自分の体を守ればいいけれど、子どもがいたら自分の傍から離れているけれど同じくらいかそれ以上気に掛けるっていう、本当に精神をかなり使うんだろうなと思っていたので、この表現に納得。
「苦しい時間を耐えていく人の食卓に豊かさを作りたい。(抜粋)」
辛いときほど、素敵なご飯。ご飯が食べられれば生きて行ける。
私はそう思っているので、このお話はとても腑に落ちました。
苦しかったり引っかかったりしているけれど、それでもやわらかいものに包まれているようなそんな空気をまとった本でした。