ゆるかん

赴くままにゆるゆるっとした感想を。観劇・読書など。残念ながら頭のいい考察などはできません。「私も読んだ!観た!」な方の感想聞きたいです。お気軽にぜひ。

傲慢と善良/辻村深月 感想

辻村さん、お名前はよく拝見しますが読むのは初めて。

ネットで見かけて気になって。

以下、内容に触れます。

恋愛・婚活系の話、と聞いて読み始めたら

サスペンス的ミステリー的な入りだったので

思ったのと違うかなと思いつつ読み進めていたら

かなり婚活系の、心理を深掘りした本でした。

この分厚さをこのテーマで書き進められるのすごいな。

 

婚活における「ピンとこない」の正体について

「その人が、自分につけている値段です(抜粋)」という

小野里さんの言葉。

ぐぐぐ、と声が出そうになる。

悪い人じゃないけど、合わない、ってふんわり

使っているけれど、実際は自分には釣り合わないと

無意識下で値踏みしている発言なのかもしれない。

 

架が、自分が真実に値段をつけても、逆を考えたことが

無かったっていう、悪意のない傲慢さにもハッとさせられます。

 

真実の両親は真実のことを「信じたことがない」。

こういう親子関係は結構あるのかも。

そこにはちゃんと愛はあるし、大事に思ってもいるのだろうけれど、

信じ、尊重するという敬意を持たず自分の所有物のように

思ってしまっている親の傲慢さ、それを

子のためと信じている恐ろしい善良さ。

 

真実の失踪に対して

「また一からなのか(抜粋)」と、つい思ってしまった架。

酷いようだけれど、理解できる。

 

自分で奨学金をとって留学し働くジャネットの

行動力と語学力を羨ましいと伝えた真実に対して、

ジャネットが、あなたは外国で暮らしたり話したりしたいのか、と問う

シーン。

「あなたがそうしたい、と強く思わないのだったら、

人生はあなたの好きなことだけでいいの。

興味が持てないことは恥ではないから(抜粋)」

ジャネット、かっこいいーーーー!!

とても素敵な返答。これはなかなか言えないでしょう。

本当に、ごもっとも。

本当に、無理して、世の中的「立派」を目指す必要って

ないよなあと思います。

 

架の女友達の何とも言えないリアルさ。

言ってることよくわかるなって部分も多いし、

鋭い。

ただ、彼女たちが悪なわけではないけれど

流石に配慮が足りないし、やっぱり身内以外への悪意も強い。

架ためじゃん、と思っていそうなところがまたややこしい。

 

真実の善良さって何とも言えないなと思います。

善良な真実は、自分がいなくなったあとの周りの人たちのこと

どれだけ考えていたのかな。

思っていたよりものうのうと暮らしていて

後半読んでいて衝撃でした。

もちろん彼女の中ではそうではないんだろうけれど。

そもそも寝ているところを髪を撫でてもらえない、とか、

そういうドラマ的なものを期待しすぎてしまう

少女性みたいなものは、ピュアではあるけれど

善良、というとざらりとする感じ。

 

最後、結婚式のキャンセルを言ったときは意外だなと思いましたが、

結局結婚したのは納得。

どんな夫婦になるのだろう。